MRI検査は電子レンジと似ている?RF(高周波)を使うのに体に悪くない理由を放射線技師が解説
こんにちは。放射線技師のPotetoです。
MRI検査について説明をしていると、患者さんからこんな質問を受けることがあります。
「MRIって電子レンジと同じような仕組みなんですか?」
「電子レンジは体に悪そうなのに、MRIは大丈夫なんですか?」
たしかにMRIと電子レンジは、どちらもRF(高周波)を使うという点では共通しています。 それなのに、電子レンジは人体に使えず、MRIは医療として安全に使われている―― この違いはとても気になりますよね。
この記事では、MRIと電子レンジの「似ている点」と「決定的な違い」を、 できるだけ専門用語を使わずに、やさしく解説します。
MRIと電子レンジ、何が「似ている」の?
MRIと電子レンジには、確かに共通点があります。
どちらも「電波(RF)」を使っている
MRIも電子レンジも、電波の一種である「高周波(RF:Radio Frequency)」を使っています。
- 電子レンジ:食品にRFを当てて温める
- MRI:体の中の水分子の反応を読み取る
この「RFを使う」という点だけを見ると、 「同じようなものなのでは?」と感じてしまうのは、とても自然なことです。
でも決定的に違う!電子レンジが「温める」理由
電子レンジは、食品中の水分子を激しく振動させることで、 熱を発生させて温める装置です。
特徴をまとめると、
- 非常に強い出力のRFを使う
- 食品全体を一気に加熱する
- 「温めること」が目的
つまり、電子レンジは「意図的に熱を発生させる装置」です。
そのため、人体に使えばやけどや組織損傷が起こる可能性があり、 医療用途には使えません。
MRIは「温める」ための装置ではありません
一方でMRIは、電子レンジとは目的がまったく違います。
MRIでRFは「情報を得るため」に使われる
MRIでは、体の中にたくさんある水分子に注目しています。
水分子は、強い磁石の中では一定の向きを向く性質があります。 そこにごく弱いRFを一瞬だけ当てると、
- 水分子の向きが少し変わる
- 元に戻るときに微弱な信号を出す
この信号を集めて画像にしているのがMRIです。
MRIは「温める」ためではなく、「信号を読む」ための装置なのです。

MRIのRFは、電子レンジと比べてどれくらい弱いの?
ここが一番大きな違いです。
電子レンジとMRIでは、RFの出力(強さ)がまったく違います。
- 電子レンジ:食品を加熱するほど非常に強い出力
- MRI:人体安全基準内に厳密に制御されたごく弱い出力
MRIでは、検査中に体が過度に温まらないよう、 国際的な安全基準(SAR:比吸収率)が定められています。
この基準を超えないよう、装置が自動で制御されています。
それでも「少し温かく感じる」ことがあるのはなぜ?
患者さんの中には、MRI検査中に
「少し体が温かく感じた」
と感じる方もいます。
これは、RFによってごくわずかに熱が生じることがあるためです。
ただし、
- やけどを起こすレベルではない
- 安全基準内で厳密に管理されている
ため、医療として問題になることはありません。
もし検査中に「熱い」「違和感がある」と感じた場合は、 我慢せずにすぐ技師へ伝えてください。
放射線技師として伝えたいこと
MRIと電子レンジは、
「どちらもRFを使う」という点だけを見ると似ていますが、 目的・強さ・安全管理のすべてがまったく違います。
電子レンジは加熱するための装置、 MRIは体の情報を読み取るための医療機器です。
MRI検査は、長年の研究と安全基準のもとで行われており、 適切に管理された環境であれば、安心して受けていただける検査です。
まとめ
- MRIと電子レンジは、どちらもRF(高周波)を使う
- 電子レンジは「温める」ために強いRFを使う
- MRIは「情報を得る」ために弱いRFを使う
- MRIは国際的な安全基準のもとで厳密に制御されている
- 人体に悪影響が出ないよう設計されている
不安なことや疑問があれば、 検査前でも検査中でも、遠慮なく放射線技師に声をかけてくださいね。
参考文献
- ICRP Publication 121「Radiological Protection in MRI」
- FDA「MRI Safety」
- RadiologyInfo.org「MRI Safety」
- 日本磁気共鳴医学会「MRI安全性指針」
- 最終更新日 2025/12/23
- 執筆者 Poteto (診療放射線技師/放射線管理士/放射線被ばく相談員/マンモグラフィ撮影認定技師)
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