CT検査

CT造影剤ってどうやって作られているの?放射線技師がやさしく解説

Poteto

こんにちは。放射線技師のPotetoです。
CT検査でよく使われる「造影剤」。 患者さんからは「中身は何?」「どうやって作られているの?」「安全なの?」と質問されることがとても多いです。

造影剤は体の血管や臓器をはっきり映すために欠かせない薬ですが、その製造工程はあまり知られていません。

今回は、CT造影剤がどのように作られているのか、放射線技師として正確な知識に基づいてわかりやすくお話ししていきます。

CT造影剤ってそもそもなに?

CTで使われる造影剤は、「ヨード造影剤」と呼ばれる薬です。 ヨウ素(Iodine)という元素を含んでおり、X線を強く吸収する性質があります。

ヨウ素が血管や臓器に運ばれる → そこにX線が当たる → 明るく映る

この仕組みを利用して、血管の形、腫瘍の状態、炎症の広がりなどを詳しく見ることができます。

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CT造影剤はどうやって作られているの?(製造の流れ)

造影剤は一般の薬と同じく、製薬会社の厳しい品質管理のもとで作られています。 ここでは、わかりやすく5つのステップで紹介します。

原料となる「ヨウ素化合物」の合成

造影剤の核となるのは「三つのヨウ素原子」を持つ化合物です。 体に安全で、かつCTで十分に役立つよう、化学的に安定した構造になるように精密に設計されています。

不純物を極限まで取り除き、医療用として使用できるレベルに調整されます。

大量の水で溶解し、薬として調整する

ヨウ素化合物を高純度の注射用水(医薬品用の蒸留水)に溶かし、 濃度・粘度・浸透圧などを細かく調整します。

この工程では、身体に負担がかからないよう 「人間の体液に近い浸透圧」になるように調整されています。

不純物がないか徹底的にチェック

造影剤は体内に直接注入する薬なので、微生物汚染や異物混入は絶対に許されません。 製薬工場では以下の検査が行われます。

  • 無菌試験
  • エンドトキシン試験(発熱物質の有無)
  • pH(酸性・アルカリ性)の測定
  • 濁度(透明度)の検査
  • 化学的純度の検査

基準をすべて満たしたロットだけが次の工程に進みます。

無菌容器に充填し、密封する

造影剤は完全な無菌状態で容器に入れられます。 わずかな菌すら許されないため、製造設備も厳重に管理されています。

容器は以下の形があります:

  • 100~200mLのボトル(自動注入機用)
  • 50mLの小型容器

最終検査 → 出荷

密封後にも再度検査が行われ、 国際規格を満たした製品のみが病院へ出荷されます。

造影剤はどんな基準で安全が守られているの?

CT造影剤は、世界中で統一された基準にもとづいて製造・管理されています。 具体的には以下のような規格が適用されています。

  • 日本薬局方(国内の医薬品基準)
  • FDA(アメリカ食品医薬品局)
  • EMA(欧州医薬品庁)
  • ICHガイドライン(国際調和基準)

このように、造影剤は非常に高度な安全管理のもとで作られているため、 臨床で安心して使用することができるのです。

造影剤はどんな種類があるの?(実はたくさんあります)

CTの造影剤にはいくつか種類があり、使い分けがされています。

分類特徴
非イオン性造影剤(現在の主流)副作用が少ない・体に優しい
低浸透圧造影剤点滴時の痛みが少ない・安全性が高い
等浸透圧造影剤体液に近く腎臓への負担が少ない

どれも、検査の目的や患者さんの状態(腎機能など)に合わせて選ばれます。

放射線技師として感じる造影剤【経験談】

造影剤は“普通の薬”と思われがちですが、実は非常にデリケートで高価な医薬品です。 温度管理、使用期限、破損防止など、取り扱いには細心の注意が必要です。

また、造影剤の種類や濃度、注入速度は検査の目的に応じて細かく調整しなければならず、 撮影の成功に直結する重要な要素でもあります。

検査の際には間違った造影剤を使用しないように、患者さんごとに体重・アレルギー歴・腎機能などを確認し、その方に合った造影剤を選択しています。

投与する直前には、造影剤が漏れたり皮下に入ってしまわないよう、針が血管にしっかり入っているかを必ず再確認しています。 安全に検査を受けていただくために、こうした工程を一つひとつ丁寧に行っています。

まとめ

CT造影剤は、血管や臓器を見やすくするための大切な医薬品です。 化学的に安定したヨウ素化合物をもとに、厳しい品質管理のもとで製造・検査され、無菌充填されたものだけが病院に届きます。

安心して検査を受けていただけるよう、放射線技師も日々安全な取り扱いを徹底しています。 不安や疑問があれば、いつでも気軽に相談してくださいね。

参考文献

  • 日本医学放射線学会「ヨード造影剤の安全性に関するガイドライン」
  • 日本放射線科専門医会・医会「造影剤の基礎知識」
  • European Society of Urogenital Radiology (ESUR) Guidelines on Contrast Media
  • FDA Drug Database:Iodinated Contrast Media
  • 最終更新日 2025/12/4
  • 執筆者 Poteto (診療放射線技師/放射線管理士/放射線被ばく相談員/マンモグラフィ撮影認定技師)
  • 免責 本サイトの情報は個別診療に代わるものではありません。 
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総合病院に勤務している放射線技師のPotetoです!放射線に関する不安や疑問に寄り添うために、このブログを立ち上げました。日々の生活に役立つ放射線の知識や、放射線技師の仕事についてわかりやすく発信しています。
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