MRI検査で金属を外すのはなぜ?放射線技師が語る安全の理由と実際の現場での気づき
こんにちは。放射線技師のPotetoです。
MRI検査を受ける前、「金属製のものはすべて外してください」と言われた経験がある方も多いと思います。
でも、「なぜ金属を外す必要があるの?」「小さいピアスやエレキバンくらいならいいのでは?」と疑問に思う方も少なくありません。
今回は、金属を外す理由と、私が実際の現場で経験した思わぬ金属トラブルのエピソードを交えながら、詳しく解説します。
MRIは“磁石の力”で画像をつくる検査
MRI(磁気共鳴画像診断装置)は、放射線を使わずに強力な磁場と電波を利用して体の中を撮影する検査です。 装置の中には1.5〜3テスラという非常に強い磁力が発生しており、これは地球の磁場の約3〜6万倍にも相当します。
この磁場があることで、体内の水分中の水素原子が反応し、画像を作り出すことができます。 そのため、MRIの周囲では「磁石が常にONの状態」になっているのです。

金属を外す最大の理由:強い磁力で“引き寄せられる危険”
磁場の中に金属を持ち込むと、磁力に引き寄せられて高速で動く(飛ぶ)可能性があります。 これを「プロジェクタイル効果(projectile effect)」と呼び、MRI室内での重大事故につながるおそれがあります。
例えば、ハサミ、酸素ボンベ、ストレッチャーなど、磁性体(金属の中でも磁石にくっつく性質のあるもの)は特に危険です。 医療従事者でも、ポケットに鍵やペンを入れたままMRI室に入ると、数メートル先の装置に“飛び込む”ように吸い寄せられてしまうことがあります。
そのため、MRI検査を受ける方にはすべての金属を取り外していただくことが、何よりも大切なのです。

もうひとつの理由:画像が乱れる・やけどの危険がある
金属は磁力だけでなく、MRIで使用される高周波(RF)信号によって熱を持つことがあります。 金属部分が皮膚に触れていると、局所的に熱を帯びて軽いやけどを起こすこともあります。
また、金属があるとMRIの画像上に黒い影や歪みが生じてしまい、正確な診断が難しくなることもあります。 ピアス・ネックレス・時計などのアクセサリー類だけでなく、 体に貼る磁気シールや湿布なども画像に影響する場合があるため、取り外しが必要です。
実際の現場での経験談:金属は思わぬところに隠れている
私の病院では、検査前に金属探知機を使って最終チェックを行います。 それでも、患者さん本人が気づいていなかったり、金属探知機に反応しなかったりする金属が見つかることがあります。
印象に残っている事例をいくつかご紹介します。
- ① ピップエレキバン
肩や腰に貼るタイプの磁気シールは、金属が含まれており磁石に反応します。 衣服の下に隠れていることも多く、「貼っていたことを忘れていた」という方も少なくありません。 - ② カラーコンタクト
一部のカラコンには、着色部分に微量の金属成分が含まれているものがあります。 目の近くで強い磁場が働くため、角膜を傷つけるおそれがあり、必ず外していただきます。 - ③ 髪の毛に使う“黒い粉”
最近は、薄毛をカバーするために鉄粉を含んだ黒い粉を髪に振りかける製品があります。 一見するとわかりませんが、磁場に反応してパラパラと浮いたり飛び散ったりすることがあります。 私は検査前の観察でこれを見つけ、患者さんに説明して洗い流してもらったことがあります。
このように、金属は“身につけているつもりがなくても”思わぬ形で体についていることがあります。 放射線技師として大切なのは、機械ではなく「人の目」で確認すること。 私はいつも検査前に患者さんの服装や表情、動きなどを観察しながら、安全確認を行っています。
金属を外すときに注意するポイント
安全に検査を受けるために、以下のものは必ず取り外しておきましょう。
- ピアス・ネックレス・指輪・時計
- 補聴器・入れ歯・ヘアピン・ウィッグ
- 湿布・エレキバン・カイロなどの貼りもの
- メイク用品(アイライン・マスカラに金属成分が含まれることあり)
- 磁気ネックレス・金属ボタン付きの服
また、体内に金属や機器が埋め込まれている方(心臓ペースメーカー・人工関節・脳動脈クリップなど)は、 MRI検査が受けられない場合があります。必ず事前に医師や技師へ申告してください。
まとめ:小さな金属も見逃さない、安全のための確認
MRI検査で金属を外すのは、安全を守るために絶対に欠かせないルールです。 磁石の力による吸着事故や、熱・画像の乱れを防ぐために、すべての金属を取り外すことが大切です。
私自身、金属探知機だけでなく、患者さんをよく観察することで見つけた金属が何度もあります。 「少しくらいなら大丈夫」と思っても、MRIの磁力は想像以上に強力です。 検査前の準備を丁寧に行うことが、安心して検査を受ける第一歩になります。
不安なことがあれば、遠慮せずに放射線技師や看護師に声をかけてください。 私たちは、患者さんの安全を守るために、常に一緒に確認を行っています。
参考文献
- 日本磁気共鳴医学会「MRI安全ガイドライン 第4版」
- ICRP Publication 105(2007)”Radiological Protection in Medicine”
- 厚生労働省「MRI検査における安全管理と注意事項」
- 日本放射線技術学会「MRIにおける金属アーチファクトと安全対策」
- 最終更新日 2025/11/17
- 執筆者 Poteto (診療放射線技師/放射線管理士/放射線被ばく相談員/マンモグラフィ撮影認定技師)
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