こんにちは、放射線技師のPotetoです。
「MRIって大きな機械で音もうるさいし、なんだか怖そう…」「放射線は出てないって聞くけど本当?」 そんな疑問や不安をお持ちの方に向けて、MRIのしくみと安全性について、できるだけわかりやすくご紹介します。
この記事では、MRIが使う磁石や電波の正体、放射線との違い、妊娠中や金属がある人の注意点など、 正確な医学情報(一次資料)に基づいて、患者さんにも安心して読んでいただける内容をまとめました。
最後まで読んでいただければ、MRIがなぜ「安全性の高い検査」とされているのかが、きっとよくわかるはずです。
✅ MRIは「放射線を使わない」検査です
MRI(磁気共鳴画像診断:Magnetic Resonance Imaging)は、X線や放射線を一切使用しない画像検査です。
以下の2つのエネルギーを用いて画像を作成します:
- 強い磁石(静磁場)
- 高周波の電波(RF波:ラジオ波)
放射線による被ばくがないため、非常に安全性の高い検査とされています。
🔍 磁石や電波を使って本当に安全?
以下は、それぞれの仕組みと安全性に関する正確な情報です。
【1】静磁場(Static Magnetic Field)
- MRIでは1.5~3テスラ(T)の強い磁場を使用(地磁気は約0.00005T)
- 体内の水素原子の向きを整えるために使用
- 3T以下の磁場による健康への長期的悪影響は、科学的根拠がありません
参考文献:ICNIRP 2009, FDA, ICRP
【2】高周波(Radiofrequency: RF波)
- 64~128MHzの非電離放射線(=DNAを切断するエネルギーはない)
- 人体の水素原子を励起 → 戻る信号で画像化
- 体温上昇を防ぐため、SAR(比吸収率)で管理
参考文献:ICNIRP Guidelines 2020, IEC 60601-2-33
👥 MRI検査で注意が必要な方
以下に該当する場合は、必ず事前に申告してください:
| 該当者 | 注意点 |
|---|
| ペースメーカー、ICD | MRI非対応機種では禁忌(対応機種も確認必要) |
| 金属が体内にある方 | クリップ、人工関節、脳内シャントなどは材質確認必須 |
| 妊娠中の方 | 非造影MRIは原則施行可能、造影剤は慎重使用 |
| 閉所恐怖症 | 鎮静薬やオープンMRIの選択肢あり |
👶 妊娠中のMRIは大丈夫?
- 放射線は使用しないため、胎児への被ばくはありません
- 妊娠2期以降のMRIは原則安全(ICRP, ACR)
- ただし、造影剤(ガドリニウム製剤)は胎盤を通過するため、原則使用しない
参考文献:ICRP Pub.84(2000)、ACR MR Safety Manual(2024)
📈 MRIと他の画像検査の比較
| 検査名 | 放射線の有無 | 被ばく量(目安) |
|---|
| 胸部レントゲン | あり | 約0.05 mSv |
| 腹部CT | あり | 約6.0~10.0 mSv |
| MRI | なし | 0 mSv |
✅ まとめ:MRIは非常に安全な検査
- 被ばくはゼロ、安全性は国際基準で確認されている
- 金属・機器を体内に持つ方や妊娠中の方は事前確認が重要
- 画像の解像度が高く、診断価値が非常に高い
安心して検査を受けるためにも、事前の問診と確認が大切です。
📚 参考文献・一次情報
- ICNIRP. Guidelines on static magnetic fields. Health Phys. 2009;96(4):504–514.
- ICNIRP. Guidelines on RF electromagnetic fields (100 kHz–300 GHz). Health Phys. 2020;118(5):483–524.
- ICRP Publication 84: Pregnancy and Medical Radiation. 2000.
- American College of Radiology (ACR). Manual on MR Safety. 2024.
- FDA: MRI Safety Guideline
- 日本磁気共鳴医学会「MRI安全性ガイドライン」(2022)
- 最終更新日 2025/9/1
- 執筆者 Poteto (診療放射線技師/放射線管理士/放射線被ばく相談員/マンモグラフィ撮影認定技師)
- 免責 本サイトの情報は個別診療に代わるものではありません。
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総合病院に勤務している放射線技師のPotetoです!放射線に関する不安や疑問に寄り添うために、このブログを立ち上げました。日々の生活に役立つ放射線の知識や、放射線技師の仕事についてわかりやすく発信しています。