放射線検査

核医学検査ってどんな検査?レントゲンやCTとの違いは?

Poteto

こんにちは。放射線技師のPotetoです。
「核医学検査」と聞くと少し特別でこわいイメージがあるかもしれません。でも実際は、放射性のお薬(放射性薬剤)を使って体の働き(機能)を調べる、安全性に配慮された検査です。今日は、しくみや流れ、被ばくの目安をやさしくご紹介します。

まずは要点
  • 核医学検査は放射性薬剤を体に入れ、体内から出る放射線を特殊カメラで撮影する検査です。
  • レントゲンやCTのように外からX線を当てるのではなく、内側からの情報をとらえます。
  • 臓器の「形」だけでなく「働き(血流・代謝・排泄など)」を評価できます。

1)核医学検査のしくみ

  • 放射性同位元素を含む薬剤(ラジオアイソトープ:RI)を静脈注射・経口・吸入などで投与します。
  • 薬剤は臓器の性質にあわせて特定の場所に集まるよう設計されています(例:骨、心筋、甲状腺、腎臓など)。
  • 体内から放出されるγ線陽電子を、ガンマカメラ(SPECT)PETカメラで検出して画像化します。

2)どんな検査があるの?(代表例)

  • 骨シンチグラフィ:骨転移や炎症の広がりを評価
  • 心筋シンチグラフィ:心筋の血流や生存心筋の有無を評価
  • 脳血流シンチグラフィ:認知症タイプの鑑別、脳血流低下の評価
  • 腎シンチグラフィ:腎機能や尿の通り道(通過障害)の評価
  • PET検査(FDG-PET):がんや炎症の活動性を評価(ブドウ糖に似た薬剤=FDGが集まる性質を利用)

3)検査の流れ(例:骨シンチ)

  1. 放射性薬剤を静脈注射します。
  2. 薬剤が骨に集まるまで1〜3時間ほど待機します(待機中は飲水を勧められることがあります)。
  3. ガンマカメラで全身を撮影(目安30分)。横になっているだけで痛みはありません

※ PETは投与後に安静待機(通常1時間前後)、その後20〜30分程度の撮影が一般的です。撮影前に絶食が指示される場合があります。

4)被ばくの目安(実効線量)

検査おおよその実効線量ひとこと
骨シンチグラフィ3〜4 mSv骨転移・炎症の広がりを評価
心筋シンチグラフィ7〜9 mSv血流や虚血の評価(負荷検査を含むことあり)
FDG-PET(全身)4〜7 mSv代謝活性を評価(CT併用の撮影法で増減)

※ 日本の自然放射線は平均で約2 mSv/年。核医学の線量は薬剤・体格・撮影法で前後しますが、必要最小限に調整されています。

5)検査後の放射線は?安全性は?

  • 薬剤には半減期があり、時間とともに減少。体外へも尿や汗などで自然に排出されます。
  • 放射線そのものが体に蓄積することはありません
  • 検査当日は飲水・排尿を促されることがあります(体外への排出を助けるため)。
  • 授乳中の方は、薬剤の種類によって一時的な授乳中断が必要な場合があります(事前にご相談ください)。

6)よくある質問

  • Q. 家族への影響は?近づいて大丈夫?
    A. 体からごく微量の放射線が出ますが、通常の生活で問題になるレベルではありません。乳児や妊婦さんに長時間密着する予定がある場合は、当日の接触時間をやや短めにする等の配慮をお願いすることがあります。
  • Q. CTやMRIでは代用できないの?
    A. CT/MRIは形(解剖)に強く、核医学は働き(機能)に強い検査です。目的に応じて使い分けます。
  • Q. アレルギーは心配?
    A. 体質によってはまれに反応が起こることがあるため、薬剤アレルギー歴は事前にお知らせください。
  • Q. 妊娠中は受けられますか?
    A. 原則慎重に適応を検討します。必要性・緊急性が高い場合を除き、代替法の検討を行います。

まとめ

  • 核医学検査は体内からの放射線をカメラでとらえ、臓器の機能を評価する検査です。
  • 被ばくはCTと同程度かそれ以下の範囲で、必要最小限に管理されています。
  • 薬剤は時間とともに減少・排出されます。生活上の影響は通常ごくわずかです。
  • ご不安や授乳・妊娠の可能性があれば、事前に遠慮なくご相談ください。

参考文献

  1. ICRP Publication 128. Radiation Dose to Patients from Radiopharmaceuticals: A Compendium of Current Information Related to Frequently Used Substances. Ann. ICRP 44(2S), 2015.
  2. ICRP Publication 105. Radiological Protection in Medicine. Ann. ICRP 37(6), 2007.
  3. 日本核医学会 編. 核医学検査技術学 第7版. 南山堂, 2019.
  4. 日本核医学会. 核医学検査とは.
  5. 厚生労働省. 放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(第5版).
  6. 日本放射線技術学会 編. 医用放射線技術実験学 第4版. 南山堂, 2019.
  7. 日本原子力研究開発機構(JAEA). 身のまわりの放射線.
  8. UNSCEAR 2020 Report. Sources, Effects and Risks of Ionizing Radiation.
  • 最終更新日 2025/10/3
  • 執筆者 Poteto (診療放射線技師/放射線管理士/放射線被ばく相談員/マンモグラフィ撮影認定技師)
  • 参考文献
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総合病院に勤務している放射線技師のPotetoです!放射線に関する不安や疑問に寄り添うために、このブログを立ち上げました。日々の生活に役立つ放射線の知識や、放射線技師の仕事についてわかりやすく発信しています。
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