放射線の影響

放射線被ばくって蓄積するの?【正しく知ろう放射線のこと】

Poteto

こんにちは。放射線技師のPotetoです。
病院でレントゲンやCT検査を受けるとき、「放射線って体にたまるの?」「検査を繰り返すと危ないのかな?」と不安に思う方も多いのではないでしょうか。

確かに「被ばく」という言葉だけを聞くと怖いイメージがありますが、正しく理解すれば、過度に心配する必要はありません。この記事では、放射線被ばくが“蓄積する”というのは本当なのか、そして医療現場ではどのように安全を守っているのかを、わかりやすく解説していきます。

「放射線は体に蓄積する」って本当?

「レントゲンを何度も受けると、放射線が体にたまっていくのでは…?」
そんな不安の声をよく耳にします。でも実際は――

👉 放射線(エネルギーそのもの)は体に蓄積しません。

X線やγ線といった放射線は、一瞬で体を通り抜けたり、体内で吸収されたりして、
体に「残る」ことはありません。ただし、細胞やDNAに与える影響は一時的に残ることがあります。

では「累積被ばく」ってなに?

放射線自体が蓄積することはありませんが、繰り返し被ばくを受けると、「影響」が積み重なる可能性があります。

  • 繰り返すことでDNA損傷のリスクがわずかに上がる可能性
  • がんなどの確率的影響のリスクは、被ばく量に比例してわずかに増加

これが「累積被ばく(cumulative dose)」という考え方です。

✅ 放射線自体は体に残らないが、被ばくの影響は累積する可能性がある
この点を混同しないことが大切です。

医療での被ばくは安全?

はい、安全性に十分配慮されています。
医療被ばくは、必要性があると判断された場合に限られ、国際的なガイドラインに基づき最小限の線量で行われています。

検査名実効線量(mSv)参考
胸部レントゲン約0.1自然放射線の数日分
頭部CT約2.0
腹部CT約8.0
PET-CT約25
骨密度検査(DXA法)0.001未満極めて低線量
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放射性物質は体に蓄積する?

ここで注意すべきは、「放射線」と「放射性物質」の違いです。

☢ 放射性物質(例:ヨウ素131やセシウム137)は、体内に取り込まれると一定期間残ります(これが体内被ばく)。
→ 原発事故や一部の放射線治療(内用療法)などで問題になります。

🩺 一方、医療用のレントゲンやCT、MRIなどの診断検査では放射線のみを使うため、体に何も残りません

まとめ:放射線=蓄積は誤解

よくある誤解正しい知識
放射線は体にたまる❌ 放射線そのものは蓄積しません
繰り返すと危険✅ 累積により影響が増す可能性はあります
医療被ばくは避けるべき❌ 必要な検査はリスクより利益が大きい

放射線検査は、病気を早く見つけたり、治療の効果を確かめたりするために、とても大切な検査です。
「被ばく」という言葉だけ聞くと心配になるかもしれませんが、医療の現場では必要最小限の放射線量で安全に検査が行われています。

放射線は“体にたまる”ものではなく、正しい知識をもつことで不安を減らすことができます。
気になることがあれば、遠慮せずに放射線技師や医師に質問してください。
安心して検査を受けられるよう、私たちがしっかりサポートします。

📚 出典・参考文献

  • ICRP Publication 103 (2007), 118 (2012)
  • UNSCEAR 2008 Report
  • 厚生労働省「医療における放射線被ばくについて」
  • 日本放射線技術学会「放射線の基礎知識」
  • NCRP Report No.160
  • 最終更新日 2025/10/1
  • 執筆者 Poteto (診療放射線技師/放射線管理士/放射線被ばく相談員/マンモグラフィ撮影認定技師)
  • 免責 本サイトの情報は個別診療に代わるものではありません。 
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総合病院に勤務している放射線技師のPotetoです!放射線に関する不安や疑問に寄り添うために、このブログを立ち上げました。日々の生活に役立つ放射線の知識や、放射線技師の仕事についてわかりやすく発信しています。
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