放射線検査のアレコレ

放射線治療ってどんな治療?検査の放射線とどう違うの?

Poteto

こんにちは。放射線技師のPotetoです。
「放射線治療」と聞くと少しこわい印象があるかもしれません。でも実際は、がん細胞を狙って攻撃する計画性の高い治療です。今日は、検査で使う放射線との違い、治療の流れや安全性を、やさしくわかりやすくご紹介します。

まずは要点
  • 放射線治療は高エネルギーの放射線をがんに集中させ、DNAを壊して増殖を止める治療です。
  • レントゲンやCTなどの診断用放射線は「写す」のが目的、治療用放射線は「壊す」のが目的で、使う量も単位も異なります。
  • 多くは1.8〜2 Gy×25〜35回など、何回かに分けて(分割照射)安全に行います。

1)放射線治療のしくみ

  • 放射線が細胞のDNAに損傷を与え、がん細胞の増殖を止めます。正常細胞は修復力が高いため、分割照射で回復する時間を確保します。
  • CTなどで得た画像を使って治療計画を立て、がんに線量を集中・正常組織を避けるようコンピュータで最適化します。

2)主な治療の種類

  • 外照射(体外照射:X線/電子線):加速器(リニアック)から照射。もっとも一般的。
  • 強度変調放射線治療(IMRT)/画像誘導放射線治療(IGRT):線量分布を緻密に調整し、毎回の位置合わせを高精度に。
  • 定位放射線治療(SRT/SBRT・ガンマナイフ等):小さな標的に高線量を少回数(例:6〜20 Gy×1〜5回)。
  • 粒子線治療(陽子線・重粒子線)Bragg peakを利用し、標的付近で線量を集中。
  • 小線源治療(内照射):放射性線源を体内・腔内に留置(前立腺・子宮頸部など)。一時的留置と永久留置があります。

3)検査と治療の違い(単位・目的)

項目診断(レントゲン・CT)放射線治療
目的体の中を写すがん細胞を壊す
量と単位少量:mSv(ミリシーベルト)治療量:Gy(グレイ) ※桁が大きく異なる
回数通常は撮影1回分割照射:例 1.8–2 Gy×25–35回(合計45–70 Gy など)

4)治療の流れ

  1. 初診・適応判断:病状や画像、全身状態を確認。
  2. 治療計画CT:固定具を作り、治療体位でCT撮影。
  3. 線量設計:医師・医学物理士・技師が標的(腫瘍)リスク臓器を設定し、線量分布を最適化。
  4. 位置合わせ(IGRT):毎回、撮影でズレを補正し同じ位置に照射。
  5. 照射:1回数分、週5回、数週間が一般的。SBRT等は少回数・高線量。

5)副作用と安全性

  • 急性期(照射中〜直後):皮膚の発赤、だるさ、粘膜炎、食欲低下など。多くは一時的。
  • 晩期(数か月以降):臓器によって線維化・機能低下などの可能性。線量制約でリスクを抑えます。
  • 外照射の放射線は体に残りません。治療後に周囲へ放射線を出すことはありません(小線源で線源が体内にある間は取り扱いに注意)。

6)よくある質問

  • Q. 照射は痛い?
    A. 照射そのものは無痛です。機械音がする中で横になっているだけで大丈夫です。
  • Q. 髪は抜けますか?
    A. 頭部に照射する場合に起こり得ます。照射した部位に限局します。
  • Q. 治療中の生活は?
    A. 多くの方は通院で日常生活を継続できます。だるさ等があれば無理せずご相談ください。
  • Q. 妊娠中は?
    A. 原則慎重に検討します。母児の安全と利益を比較し、代替療法や時期調整を検討します。

まとめ

  • 放射線治療は、がんに線量を集中的に当てる科学的な治療です。
  • 検査用の放射線とは目的も量も別物。計画と位置合わせで安全に行います。

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放射線技師
総合病院に勤務している放射線技師のPotetoです!放射線に関する不安や疑問に寄り添うために、このブログを立ち上げました。日々の生活に役立つ放射線の知識や、放射線技師の仕事についてわかりやすく発信しています。
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