放射線の基礎知識

実効線量と等価線量って何?やさしく解説します

Poteto

こんにちは。放射線技師のPotetoです。
「放射線の量」を表す言葉はいくつかありますが、なかでもよく登場するのが実効線量等価線量。名前が似ていて迷いやすい用語を、やさしく整理してお伝えしますね。

まずは要点
等価線量:臓器が受けた放射線量に、放射線の種類ごとの重みをかけた値(単位:シーベルト, Sv)
実効線量:等価線量に、臓器の感受性(影響の受けやすさ)の重みをかけて合計した値(単位:シーベルト, Sv)

1)等価線量とは?

イメージ:「どんな種類の放射線を受けたか」を反映した線量です。

  • 対象:臓器や組織ごとに評価します(例:肺、乳房、甲状腺など)。
  • 考え方:同じ量の放射線でも、種類によって体への影響が違うため、放射線加重係数(wRという重みをかけます。
  • 代表的な重みの例:
    • X線・γ線・β線:wR=1
    • α線:wR=20
    • 中性子線:エネルギーによってwR=約5〜20
  • 単位:シーベルト(Sv)

2)実効線量とは?

イメージ:臓器ごとの等価線量を「体全体へのリスク」に換算してひとつの数値にまとめたものです。

  • 対象:全身(複数臓器)を総合的に評価します。
  • 考え方:臓器ごとに放射線の影響を受けやすさが異なるため、組織加重係数(wTという重みをかけて合計します。
  • 代表的な重みの例:
    • 骨髄・乳房・肺・結腸・胃など:wT=0.12(影響を大きめに評価)
    • 生殖腺:wT=0.08
    • 膀胱・肝臓・食道・甲状腺など:wT=0.04
    • 皮膚・骨表面・脳・唾液腺など:wT=0.01
  • 単位:シーベルト(Sv)

3)CTやレントゲンではどう使われる?

  • 等価線量:肺や乳房など、撮影部位の臓器ごとに計算されます。
  • 実効線量:複数臓器の等価線量を「体全体への影響」に換算してひとつの値で示します。検査どうしや日常生活の被ばくと比較しやすいのが特徴です。

代表的な実効線量の目安
・胸部CT:約7 mSv
・頭部CT:約2 mSv
・腹部CT:約8 mSv
※装置や撮影条件、体格、施設方針で前後します。検査は「診断に必要な最小限」に調整されています。

4)妊娠・授乳中の方へ

  • MRI:放射線(電離放射線)は使用しません。必要性があるときに選択されます。
  • CTやX線:必要性が高い場合は実施されます。胎児や母体に配慮しつつ、線量は最小限に調整されます。
  • 迷ったら:週数や症状、撮影部位に応じて最適な方法をご一緒に選びます。気になることは遠慮なくご相談くださいね。

5)数式が気になる方向け(読み飛ばしてOK)

  • 等価線量(臓器T):HT = ΣR wR × DT,R
  • 実効線量:E = ΣT wT × HT = ΣT wT ΣR wR × DT,R

まとめ

  • 等価線量:放射線の種類による影響を反映した臓器別の線量(Sv)
  • 実効線量:臓器の感受性を考慮して体全体のリスクに換算した線量(Sv)
  • 検査の必要性があるときは、線量は必要最小限に最適化されます。心配な点はいつでもご相談ください。
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放射線技師
総合病院に勤務している放射線技師のPotetoです!放射線に関する不安や疑問に寄り添うために、このブログを立ち上げました。日々の生活に役立つ放射線の知識や、放射線技師の仕事についてわかりやすく発信しています。
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