マンモグラフィ検査のしくみをやさしく解説|どうして乳がんが見つかるの?
こんにちは。放射線技師のPotetoです。
乳がん検診などでよく行われる「マンモグラフィ検査」。名前は聞いたことがあっても、
「どうやって撮るの?」「痛いって聞くけど大丈夫?」「なぜ乳がんが写るの?」と、不安や疑問を持つ方も多いと思います。
今回は、放射線技師の目線から、マンモグラフィ検査の原理や仕組みをわかりやすくご紹介します。
マンモグラフィとは?
マンモグラフィとは、乳房専用のX線(レントゲン)検査のことです。
乳腺や脂肪、血管、しこり、石灰化(カルシウムのような小さな白い粒)などを映し出すことで、乳がんを早期に発見するための大切な検査です。
この検査では、乳房を専用の機械で上下または左右から軽く挟み、薄く広げて撮影します。 圧迫することでX線が均一に通りやすくなり、より鮮明で正確な画像を得ることができます。

どうして乳がんが写るの?
レントゲン検査は、体を通り抜けるX線の量の違いで画像を作ります。 乳房の中には、脂肪・乳腺・血管・しこりなどがあり、それぞれX線の通りやすさが異なります。
- 脂肪: X線が通りやすく、画像では黒っぽく写ります。
- 乳腺: やや白く写り、年齢や体質によって量が変わります。
- しこりや石灰化: X線を通しにくいため、白くくっきりと写ります。
このように、白い部分と黒い部分の濃淡の違いを利用して、乳がんやその前段階の変化を見つけるのです。
特に「石灰化」は数ミリ以下の小さな点として現れ、早期がんのサインであることもあります。
どうやって撮影しているの?
マンモグラフィでは、一般のレントゲンと同じくX線を使いますが、乳房用に特別な工夫がされています。
普通のレントゲンは骨などの硬い部分を撮るのに適していますが、乳房は柔らかいため、より弱いエネルギーのX線が使われます。 これにより、乳腺やしこりなどの微妙な違いを繊細に映し出すことができます。
また、撮影時に乳房を「圧迫(あっぱく)」する理由には、次のような意味があります。
- X線が均一に通るようにするため(画像がムラにならない)
- 乳房の厚みを減らして被ばく量を少なくするため
- しこりが重なって見えなくなるのを防ぐため
圧迫といっても短時間で、通常は数秒〜十数秒で終わります。
個人差はありますが、検査技師ができる限り痛みが少なくなるように工夫しています。
被ばくは大丈夫?
「レントゲン」と聞くと被ばくを心配される方も多いですが、マンモグラフィで使用する放射線の量は非常に少なく、胸部レントゲンの数分の一程度です。 さらに、乳房専用の機械は放射線の量を最小限に抑えるように設計されています。
検査で得られる情報の方が圧倒的に重要であり、早期発見・早期治療につながるメリットが大きいとされています。
検査の流れ
マンモグラフィの検査時間は約10分程度。当日の流れは次のようになります。
- 受付・更衣:上半身を検査着に着替えます。ネックレスやピアスなど金属類は外します。
- 撮影:乳房を片側ずつ、上下方向と左右方向の2方向で撮影します。
- 確認:撮影後、技師が画像を確認し、問題がなければ終了です。
検査中は「もう少し前へ」「肩の力を抜いてくださいね」などの声かけがあります。
協力していただくことで、より正確な画像を撮影することができます。
女性技師に撮ってもらいたい場合
マンモグラフィ検査は、乳房を直接触れながら位置を調整する必要があるため、女性技師が担当することが多い検査です。
ただし、施設によっては男性技師・女性技師のどちらも在籍している場合があります。

女性の放射線技師さんに撮影をお願いできますか?
女性技師による検査を希望する場合は、予約や受付の際にその旨を伝えておくと対応できることが多いです。 (※施設によっては男性技師しか在籍していないこともあるため、その場合は希望に沿えないこともあります。)
不安な場合は、事前に電話などで確認しておくと安心です。
どんな人に向いている検査?
マンモグラフィは40歳以上の女性の定期的な乳がん検診に特に有効です。 乳がんは40代から発症が増える傾向があり、早期のうちに見つけることで、治療成績が大きく改善します。
ただし、若い世代(30代以下)は乳腺が発達していて白く写りやすく、マンモグラフィでは見えにくいことがあります。 その場合は、超音波検査(エコー)を併用して行うことが推奨されます。
マンモグラフィの歴史と進化
乳房のX線撮影が始まったのは、レントゲン博士がX線を発見してからおよそ50年後の1950年代。 当初は一般のレントゲン装置を使っていたため、画質も粗く被ばくも多いものでした。 しかし現在は、デジタル技術の進歩により「デジタルマンモグラフィ」が主流となり、 画像の解像度が高く、撮影後すぐにモニターで確認できるようになりました。
さらに、3Dで撮影するトモシンセシス(3Dマンモグラフィ)も登場し、 乳腺が重なって隠れていた病変をより正確に見つけられるようになっています。
まとめ
マンモグラフィ検査は、放射線を最小限に抑えながら乳がんを早期に見つけることができる安全で大切な検査です。 撮影時の圧迫には理由があり、より正確で安全な画像を得るための工夫です。 また、女性技師による撮影を希望する場合は、事前に伝えることで配慮が受けられることもあります。 少しの勇気が、未来の安心につながります。気になることがあれば、遠慮なく技師や医師に相談してくださいね。
参考文献
- 日本乳がん検診学会「乳がん検診ガイドライン 2022年版」
- American College of Radiology (ACR). ACR Practice Parameter for the Performance of Screening and Diagnostic Mammography, 2023.
- 厚生労働省「がん検診に関する指針」
- ICRP Publication 103 (2007). The 2007 Recommendations of the International Commission on Radiological Protection.
- Roentgen WC. “On a New Kind of Rays.” Würzburg Physical-Medical Society, 1895.
- 最終更新日 2025/10/14
- 執筆者 Poteto (診療放射線技師/放射線管理士/放射線被ばく相談員/マンモグラフィ撮影認定技師)
- 免責 本サイトの情報は個別診療に代わるものではありません。
